【在職中の方は要注意!】年金繰下げ請求時の注意点

年金
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以前、年金の繰下げ年齢が引き上げられることについての記事(老齢年金 繰下げ受給の上限年齢引き上げ)を掲載しましたが、今回は繰下げ請求をするときの注意点について説明いたします。
特に在職老齢年金による老齢厚生年金の一部または全額停止されている方は、注意が必要です。

在職老齢年金の一部または全部が停止されている方へ

65歳以降の老齢厚生年金が在職老齢年金で一部または全部が停止されている人は、その停止された部分については繰下げによる増額の対象とはなりません。

65歳時点で在職中のかたは、自分の老齢厚生年金が停止にかかるのかどうか、年金事務所などで確認しておいたほうがよいでしょう。

なお、在職老齢年金による支給停止額は下記の計算となりますので、ご自身で計算することもできます。
支給停止額 = (①総報酬月額相当額+②基本月額-48万円)✕1/2✕12
①総報酬月額相当額=(標準報酬月額+1年間の賞与)÷12
②基本月額=(年金額)÷12
①+②<48万円なら全額支給です(停止なし)

上記の基本月額には老齢基礎年金や加給年金は含まれません。
(加給年金を受給するには要件があります)
加給年金は老齢厚生年金が全額停止の場合は支給停止されます。
(老齢厚生年金が一部でも支給されている場合は加給年金が支給されます。)
また加給年金は、繰下げしている期間支給はなく、増額対象にもなりません。

特別支給の老齢厚生年金は繰下げできない

皆さんご存じだとは思いますが、65歳前の特別支給の老齢厚生年金(以下、特老厚)は繰下げすることができません
年金を繰下げ受給するつもりだからと言って特老厚の受給権が発生しているにも関わらず請求手続きをしていない方がたまにいらっしゃいます。
繰下げできるのは65歳以降の老齢年金ですから65歳前の特別支給の老齢厚生年金は遡って受給した場合でも増額しません。
また年金の支分権(各支払期月ごとに年金を受給する権利)は5年で消滅しますので、受け取ることができた月から5年を経過した分は時効によって消滅します。
従って、特老厚の請求手続きは必ず行ってください。
特老厚の受給権が発生した時点で在職老齢年金の調整で全額停止していた場合でも、その後、給与が下がったり令和4年4月1日の支給停止基準額の変更などによって一部支給となっている場合もありますので、請求遅延による失効にご注意ください。

遺族厚生年金を受給するようになった場合

老齢厚生年金を受給している人の配偶者が亡くなり、遺族厚生年金が発生する場合、自分自身の老齢厚生年金より遺族厚生年金の方が高い場合は、一般的には遺族厚生年金を受給することになります。
遺族厚生年金を受給する人に老齢厚生年金がある場合は、老齢厚生年金が優先的に支給され、遺族厚生年金は差額支給となります。
従って、配偶者が先に亡くなった場合、遺族厚生年金を受給できる人は繰下げして増額した老齢厚生年金を受給していても遺族厚生年金のほうが高ければ、老齢厚生年金と遺族厚生年金の合計額は繰下げしない場合と変わりません。
なお、遺族厚生年金は所得税法上、非課税ですが老齢厚生年金は所得税の課税対象となります。
繰下げ受給を検討するにあたって、配偶者が亡くなった場合の遺族厚生年金も考慮しておいた方が良いでしょう。

税金や社会保険料への影響

繰下げ受給により増額した年金を受給する場合、税金や社会保険料への影響も考慮する必要があります。
また、その他、施設への入居要件など収入が低い方が有利になるような案件もありますので、そういった点も含めて検討する必要があります。

老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げできる

意外とご存じない人がいらっしゃいますが、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げすることができます。

例えば加給対象の配偶者がいる方で、老齢厚生年金が在職老齢年金制度で一部停止している場合は、加給年金は支給されますので、老齢厚生年金は65歳から受給し、老齢基礎だけを繰り下げるという方法も考えられます。

逆に老齢基礎年金を65歳から受給し、老齢厚生年金を繰り下げるという方法も考えられます。65歳以上で厚生年金に加入して働いている場合、老齢基礎年金は在職老齢年金の調整の対象外なので、減額されることはありません。そこで老齢基礎年金は65歳から受給し、老齢厚生年金を繰り下げて増やすのです。

人それぞれ状況は違いますし、ライフプランも違いますので、ご自身に合った受給の選択をすることが大事です。
適宜、年金事務所などに相談しましょう。

 

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